2001.11.09上田市でフィルムコミッションシンポ
FCに地域資源発掘と結びつきの効果
写真=活発な意見が交わされたパネルディスカッション
「映画などのロケで地域に活力と映像文化の発展を!」をテーマに、長野県上田市で「フィルムコミッション(FC)全国シンポジウムin信州上田」が11月9日(金)午後1時から5時まで開催された。英国のFC関係者による基調講演や日本の映画関係者らによるパネルディスカッションなど盛りだくさんの内容。新潟フィルムコミッション研究会からは5人が参加した。当日の様子をレポートする。(新潟FC研・星龍雄)
上田市は人口約12万人。長野市から高速道路で20分ほどで、長野新幹線も開通し、交通の便はよい。同シンポは上田市や上田観光コンベンション協会、6月に発足した信州上田FCなどの主催。「日照時間が長く、ロケ地に最適」という同FCのPRコピーの通り、当日は晴天だった。
会場の上田市文化会館には約200人が参加。北海道から九州まで、自治体関係者が目立った。まず英国・ノーザン・スクリーン・コミッションのコミッショナーであるポール・ミンガード氏による基調講演が行われた。英国ではFCのことをスクリーン・コミッション(SC)というそうだ。ノーザンSCは英国北部の複数の郡で構成し、1993年に設立した。英国ではこのほか国の文化省が管轄するブリティッシュ・フィルム・コミッションもあり、国のFCとリージョナル(地域)のFCが協力し合い、映画誘致に力を入れているという。写真=ミンガード氏
ノーザンSCはスタッフがわずか2人。予算は、地方自治体、地元企業、EU、国の宝くじ、政府からの補助金などでまかなわれている。
同SCは、観光局が旅行代理店などを招待するように、世界中の映画製作者やアートディレクターを地元に招き、ロケ地となりそうな場所の見学ツアーを開催「北イングランドによい印象を持つように努力している」という。97年の見学会の結果、大ヒット小説の映画化「ハリー・ポッター」の撮影地に選ばれた。また「招待した人がロケ地に選ばなくても、ほかの関係者に『あそこはよかったよ』と伝えてくれる」効果も期待している。
このほか、地方自治体向けのセミナーを開催し、ロケ誘致の効果や利益を説明しているという。
「私たちはハリウッドでも学生映画でも分け隔てなく対応する。すべてが無料であり、利益は期待せず偏見なく情報を提供する。どのような問い合わせでも1日以内で速やかに対処することをモットーにしている」とミンガード氏。その結果がいろいろな効果に結びついていると強調する。
例えば、昨年は地元に 5200万ポンド(約93億円)の経済効果をもたらし、 映画製作を通じて200以上の雇用機会を生んだ。そして何より「北イングランドを世界中の人に見てもらった」ことにより多くの観光客が訪れるようになったという。
同地域のビジターセンターでは「『ロビンフッド』で、ケビン・コスナーが立っていた木はどこにあるか」などの問い合わせがひっきりなしに来るという。「映画のロケ地になることは、地域資源を発掘し、結びつける効果がある」とミンガード氏は話した。
写真=会場の様子
続いて「日本版フィルムコミッションの推進について」と題した基調報告が行われた。講師は国土交通省総合政策局観光部地域振興課長の惟村正弘(これむら・まさひろ)氏。惟村氏はFCと国交省という国の機関の関係について「20世紀の政策は『定住』を中心にやってきた。観光面でいえばリゾート施設をつくるとか、スキー場をつくるとか」により、地域の雇用や付帯産業などの定着などを期待したという。しかし人口減少などで「定住人口から交流人口を増やそうという観点に観光行政はシフトしている。地域の街そのものを見てもらう、地域が誇りの持てる街を見てもらう、その結果生まれる交流の中から地域の発展が生まれる」と惟村氏は説明。
その上で「FCの経済効果はどれぐらいかとよく聞かれるが、旅館の売り上げがすぐ伸びるわけではない。5年、10年、20年のうちにFCを通して知名度が徐々に上がり、市民一人ひとりが地域に誇りを持つようになる。それが一番の成果だと私は考える」とし、「あくまで地域住民が主体なので、国は陰ながら応援したい」と述べた。
休憩後はパネルディスカッションに入った。パネリストは日本観光協会調査企画部長の古賀学(こが・まなぶ)氏、経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課長補佐の境真良(さかい・まさよし)氏、上田市出身の映画プロデューサーである永井正夫(ながい・まさお)氏、全国FC連絡協議会副会長の前澤哲爾(まえざわ・てつじ)氏、映画監督の村川透(むらかわ・とおる)氏の5人。司会は地元フリーパーソナリティーの武田徹(たけだ・とおる)氏。
ディスカッションは日本版FCの必要性や課題、日本映画界の現状などについて討論した。
村川氏は「海外では届け出ればフランスでは道を止めてくれるし、ロサンジェルスやニューヨークでは警察は仕事として協力してくれる。フィルム・フレンドリーな意識がある。日本ではフレンドリーな場所もあるが、剣もほろろな場所もある。自治体によって差がある。もっと大きな気持ちでやっていただきたい。ノーから始まってはいけない」と体験を交え映画業界からの要望を述べた。
前澤氏は「観光振興ということで、観光名所を撮ってほしいと要望することは間違い。FCは5年、10年やってはじめて経済効果が生まれてくる話」と、昨今の単純な「観光振興にFC頼み」という流れにくぎを差す。また「自治体がFCを役所の感覚でやると失敗する。行政にはフレキシブルな対応こそが求められている。そのためには市民を巻き込まなければいけない」と、市民と一体となった有機的な取り組みが必要だと強調した。
それを受けて古賀氏は「松江市の美術館の閉館時間は『日没プラス30分』となっており、そこから見える夕日がいかにきれいかを知った上で対応している。こういう発想が行政に求められている」と述べ「観光振興とごっちゃになると、観光客を呼ぶためのもの、PR効果が高いもの(に協力する)という発想になる。これからの観光は、『さりげない風景』を求める方向に変わってきている」と指摘した。また永井氏は、茨城県のある町での雨降らし(消火栓などから水を引き雨のシーンをつくること)のシーンで、人手が足りず、行政がほかの町村から応援を仰いだ例を挙げ「撮影はその町一カ所では撮りきれない状態がある。広い連携が必要」と話した。
境氏は、現在の日本映画の現状について「コールタールの海でもがくような、生きていくのがやっとの状態」と指摘。「個人的には流通が問題だと思う。各地で上映会などをシステム化すれば、新しい映画の配給方法が生まれる。みんなでいい映画をつくろうという意識にもつながる」と述べ、制作の応援だけではなく、上映までも含めた地域と映像業界との新しい結びつきが必要だと提案した。
全体的には、昨今のFCや設立を考えている自治体では観光名所を撮ってもらうことを目的とする流れがあり、それについてFC関係者は危惧していること。むしろ観光の概念が大きく変わりつつあること、FCには市民やさまざまな関係先との連携や結びつきが不可欠であることなどの意見が印象に残った。