99.10.08
―「白痴」制作・新潟の2000日物語―
「白痴」の記録編纂委員会編
新潟日報事業社発行
定価1500円(税込)四六判、275ページ
開 講97年1月12日、にいがた映画塾は開講した。
新潟市万代市民会館3階の視聴覚室に、聴講生も含めた70人の参加者は入りきれず、同じ講座を2回やらなければならなかった。受講生は16歳から66歳まで、いろいろな世代の顔が並ぶ。初日の講師は手塚眞。
「映画をつくるにあたって、最初に、皆さんには観る立場だったこれまでの考え方を取り去ってほしいのです。また、映画のテーマから考え始めないで下さい。では一体どこから考え始めるか。まず『目的意識』を明確にする事が必要です。例えば、なぜ映画塾を受講したのか、自分の中で問いただして下さい。自分自身を見つめるヒントは『自分は何が好きで何が嫌いか』ということです。それはどうしてなのか、その正直な自分を伝えるために、制作上のテクニックを教えましょう」
「映画を学ぶことで、映画のいろいろな面が見えてくる。すると、自分の生き方や周りの物事や人間もいろんな見え方をし、非常に視野が広がってくると思います」
映画塾は全10回のカリキュラム。プロの機材説明やカメラワーク、ビデオを使った簡単な短編制作、脚本入門などを経て、35ミリや16ミリカメラを使った卒業制作に突入していく。「間口は広く、敷居は低く。専門的な技術より、明るく楽しく。知識は撮るために最低限あればいい」と考えた古澤敏文の手で、カリキュラムはできるだけ柔らかくつくられた。
講師は手塚、古澤のほか、矢口史靖、風間志織、今関あきよしといった古澤人脈の映画監督、新潟水俣病が発生した阿賀野川と住民の暮らしを描いたドキュメンタリー映画『阿賀に生きる』の監督、佐藤真とカメラマンの小林茂も講師役を快諾した。
「オタクっぽい人間やガチガチのプロ志向のやつが多いかと思ったが、そうでもないなあ」
受講生の一人、星龍雄(32)はなぜかホッとした。毎回、確かに会場は映像で何かを表現したいという意欲に満ちていたが、あまりにバラバラな年齢層、周りと話をしてみても8ミリカメラはおろかビデオすら回したことがないという答えが多く、映画もあまり見ていないという人すらいた。
(略)
受講して星が新鮮だったのは、10代、20代の若者たちの姿勢だ。「僕らだと『自主映画を撮るぞ』って肩に力が入るが、彼らは自主映画とプロの映画に境界がない。映画・映像が特別なものではなく、当たり前のものとして受け止めている。その軽さが興味深い」。さらに肩書きや年齢差など全く関係なく話ができる。「あの映画が好き」「こういう映画をつくろう」。時間を忘れて盛り上がれる空間が心地よかったという。
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