99.10.08


映画が街にやってきた

―「白痴」制作・新潟の2000日物語―

「白痴」の記録編纂委員会編

新潟日報事業社発行

定価1500円(税込)四六判、275ページ

 

編集長から一言

テーマは「映画の力」です。

 本書「映画が街にやってきた」のテーマは「映画の力」です。

 「映画をつくる」と聞いたとき、つくり方はよく分からなくても、妙に心がワクワクしたり、できることならその場に立ち合いたいという思いになることはないでしょうか。そんな風に心が騒ぐこと、それが映画の力です。

 さかのぼれば、フランスのリュミエール兄弟が世界で初めて映画を上映した1895年。その「列車の到着」を見た観客は、スクリーンの向こうからやって来る列車に驚き、逃げ出したといわれています。

 それから100年余の間、映画はいかに人を驚かせ、怖がらせ、感動させるかに知恵と技術を絞ってきたといえるでしょう。まさに映画は「エモーショナルなメディア」なのです。

 映画「白痴」は、新潟市出身の坂口安吾の原作ですが、企業や行政は積極的に動かず、資金集めは結局失敗に終わりました。では、新潟は「白痴」に冷たかったのかというと、そうではなくて、1000人を超す大勢のボランティアやエキストラが参加し、県庁わきのオープンセットは、これまでの新潟にはなかった不思議な熱気に包まれました。

 動かぬ組織と何かにとりつかれたような個人。この極端な差は何なのか。ボランティアや映画塾などでその場にいた私たちは、その理由を知りたいと思いました。

 関係者からの聞き書きを続けるにつれ、「映画の力」という言葉が浮かびました。「白痴」は現在の日本映画が持つ「映画の力」そのものだったのではないかと考えました。対照的だった組織と個人は、実は「映画の力」というコインの裏表だったのです。

 本書は、「白痴」がつくられる過程を詳細に記録しながら、同時に映画の力に触れた新潟の関係者の心の動きを中心に据えています。ですから、この本は「白痴」の記録ではなく、「白痴」をめぐる新潟の記録なのです。一人ひとりの「思い」の記録なのです。

 映画「白痴」とともに、本書もぜひお楽しみ下さい。

(「白痴」の記録編纂委員会編集長・星龍雄)

 お問い合わせのメールはこちら