99.7.7
「白痴」を一般初公開
東京のPFFイベントで
手塚監督 感慨深げ

写真=舞台あいさつで感慨深げに語る手塚監督(左)
新潟でのクランク・アップから9カ月、手塚眞監督の映画「白痴」がついに完成、7月3日夜に東京で一般観客向けに初上映された。「ぴあフィルムフェスティバル」(PFF)のプログラムの一環として行われた上映会には約320人が来訪。手塚監督とのティーチ・インも行った。当日の様子をレポートする。(レポーター・星龍雄)
「実は20年前のきょう、初めてつくった映画がPFFで上映されたんです。その半分の10年間を僕は『白痴』に費やしてきた」―。冒頭のあいさつで手塚監督は、構想から10年後にやっと作品が日の目を見ることについて感慨深げに述べ、映画は始まった。
完成した映画「白痴」は2時間26分の超大作。内容については詳しく述べないが、坂口安吾原作の、第2次大戦の時代の重い空気は残しながらも、特撮を駆使した派手な爆発シーンあり、祝祭空間あり、スリルあり、ミュージカルあり、恋愛劇ありと、まさに“手塚ワールド”てんこ盛りといった感じの作品だ。しかも7億円という予算をかけただけあって、これまでの手塚監督の“自主映画”とは違ったスケール感で観る者に迫ってくる。途中主催者側の不手際で、数分上映が中断したのは残念だったが、長編を飽きさせないテンポで映画はクライマックスへと進んでいった。
再び灯りが灯り、満場の拍手の中、手塚監督とPFFの荒木啓子ディレクターとの対談に入った。手塚監督は「気が付いたらいまは1999年7の月。ノストラダムスの予言がありましたが、『アンゴルモアの大王』ってアンゴ(坂口安吾)のことだったのかな、って思っています」と、まずはジョークからトークは入った。
手塚氏は10年間の思いを一気に吐き出すように語る。「何でこの映画をつくろうと思ったんだろうって、常に感じていた。イメージがたまって苦しくなりました。心の中からでも出さないと気が狂って死んでしまう、つくり上げないとしょうがないと思ってやった」「10年たっても、なにがやりたいのか分からない。ただ心の中のイメージだけだった」「10年前からヒロインは甲田益也子さんだと考えて、長くラブコールしていた。浅野忠信君は2年ほど前にお会いしていて、その1年後に会ったら伊沢(『白痴』の主役名)に似てきていて、その場でお願いした」―。
手塚監督にとって「白痴」は、プロになって初めての映画だと言える。確かにデビュー作は「星くず兄弟の伝説」だが「低予算でつくったインディーズ」だと自身で振り返る。「今回は常に現場に100人規模のスタッフがいて、関わった人は1000人を超える。エキストラも500人近い人が夜遅くまで関わってくれた。8ミリをやっていると甘えにつながることもあるが、これだけ多くの人が関わってくれていると心が引き締められた」と話す。
写真=満員の観客席
対談の後は、観客とのティーチ・イン。主なやりとりは以下の通り。
質問「楽しめたが、途中でゲストが出てきて冷めてしまった」
手塚「確かに冷めてしまうことがあるかもしれないが、それを僕は大切に考えていて、自分自身に返るというか、入り込みすぎないところがあってもいいと思う」
質問「自分がしたいことを全部やった作品だと感じた。こんな映画ほかにないと思う。SFXも効果的だった」
手塚「実は特撮にはさほどお金はかかっていない。せいぜいCM1本分ぐらいです。予算が厳しかったので、できるだけのことはやろうと思ったが、いわゆるCG、特撮が売り物の映画に比べたら何十分の一しかかけてない。普通は特撮と本編のスタッフは分かれてしまうことが多いが、今回は一緒になって論議して長い時間かけたため、結果的には高い質につながったのではないか。僕はすべてをやり尽くしたとは思っていない。気持ちの上では、この作品は僕にとって小品なんです。小さい小さい心の話。それだけにち密につくることに時間とお金をかけた」
最後に手塚監督は「4日前に短編の新作を撮り終えたのですが、映画を撮れば撮るほど新しいイメージが増えてくる。その基は心の中に最初にあるものだと思う。もともと自分の心の中で表現したいものが、たまたま『白痴』という形になった気がします。この作品はみなさんの心の中に取り入れられるまでに時間のかかる作品だと思います。そして、もしその後気に入ることがあればぜひ友人にも紹介してください」と締めくくった。
手塚監督にとって「白痴」は、この10年間の自分自身であり、SFXや作品のテーマなどよりも、手塚監督の心そのものを観てほしい、感じてほしいと言っていたのかな―帰りの関越道の車の中で、そんなことを感じた。
「白痴」は11月に全国公開の予定。この作品には、あからさまには触れないにしろ、確実に新潟という場所と時間が生きている。少なくとも新潟の人には必見の作品だ。
HP掲載後、プロデューサーの古澤敏文氏から「来客数は220人ではなく320人である」という指摘がありました(本文はすでに訂正済み)。また、当日の舞台裏の状況についてメールをいただいたので、一部を掲載します。
ところであの会場の椅子の数は、320席でした。詳細を言うと、前売り約200枚は発売2日で完売。これはPFFのカリキュラムの中でもぐんを抜いての成績でした。ぴあの他のプログラムの中でも一番早く売り切れたし、当日は関西以南からわざわざ来た人もいました。完売後も事務局に問い合わせが殺到しました。当日は雨にもかかわらずキャンセルが殆ど出ず、整理券での入場者はたった3人のみとなってしまい、整理券待ちの40名ほどは帰って頂きました。びんぶん
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