
向田邦子賞脚本家を招き特別講座
「39刑法39条」「トトの世界」の大森寿美男さん
「映像は集団作業。脚本はいい集団を集めるための磁場」

写真=大森寿美男さん
01年にいがたシナリオ講座は番外編として11月4日、本年度向田邦子賞を受賞した脚本家、大森寿美男さん(34)を招き、特別講座を開催。自作の裏話や、「映画もテレビも集団作業。脚本はいい集団を集めるための磁場」など、自身のシナリオ哲学を披露。また「何を書いていいか悩むより、とにかく何か一言を書き始めて、書きながら迷った方がいい」「登場人物を理詰めで考えないこと。シナリオを書きながらその人物と出会う気持ちで」など、受講生に的確なアドバイスを行いました。
特別講座は、にいがたシナリオ講座講師の司貴志さんを司会に、昨年度の卒業生も含む17人が参加。司さんから事前に大森さんのシナリオのコピーが渡され、予習が義務づけられていたためか、活発な質問が出ました。
大森さんのシナリオ経歴は、19歳で結成した自分の劇団の台本から出発。96年に映像方面の脚本家に転身しました。芝居と映画のシナリオの違いについて「最初はどうしてもセリフで説明しようとしてしまう。『何で人が来て、去るまで書くのか』とプロデューサーに言われて気付いた。シナリオは映像化してもらわないと、映像との距離感がつかめない」と、最初はとまどったとか。
「39刑法39条」「黒い家」と2作で組んだ森田芳光監督についてはこの世界にはいる前からあこがれていたそうで「すごい人」と形容。「画づくりから考える人。例えば『このシーン読んで、踏切の音が聞こえたんだけど、このシーンを踏切の近くにできないかな』とか、『黒い家』では5階の部屋なのに『ボーリングの球が窓から飛んでくるシーンが浮かんだんだけど』なんて言う。映画のシナリオを書く上では一番学べた監督」だそうです。
「黒い家」やテレビドラマの「トトの世界」は原作がある作品。「原作ものの場合、シナリオで注意することは、読後感を大事にしないと失礼なので、自分が受けた読後感とは何か、それがテーマだと考えて押さえるようにする」そうです。
これまでの作品は、プロデューサーから出てくる企画がほとんど。「自分でやりたいという企画やテーマは」という質問については「ない。どういう題材を与えられても、それに向かうと必ずやりたいことが生まれてくる。どうしても自分というものが離れられないし、最終的にできてくるのは人の企画でも自分の企画だったとしてもそんなに変わらないのでは」と言います。
テレビドラマの脚本に贈られる向田賞を受賞するなど、テレビでも活躍している大森さん。「テレビの脚本では何が大事か」と聞かれ「テレビにしても映画にしても集団で作るのだから、なにが一番大事かと決めるのはおかしい。音響スタッフが違ってもどこか変わってくるし、だれか一人欠けても同じものにはならない。脚本はそういう集団を集める磁場だと思っている。いいものを書けばいい集団が集まってくる」と述べました。
創作時には、登場人物の家族構成やプロフィールを考えはするけれども、書くときには「ファーストシーンが思い付いたら書き出して、次にどうしよう、どうしようと考えながら書く」そうで、「最初から読み直すと、直しで一日が終わってしまうので、あまり読み返さない」とも。その上で受講生には「何か一言打つと見えてくることがある。書きながら悩んだ方がいい」とアドバイス。
また、登場人物のキャラクターの膨らまし方では「あまり人物を頭の中で理詰めで考えないこと。シナリオを書くことは登場人物に出会うことだから、理解できないやつも出てくる。その人を理解したいから書く。いいキャラとか悪いキャラとか、実際の社会ではそんな単純な人間は存在しない。こいつ何考えているかわからないけど、こういうやついるよな、みたいな方がおもしろい」と助言。時間いっぱいまで受講生の質問は続きました。
写真=最後にみんなで記念撮影
大森寿美男(おおもり・すみお)
1967年、横浜生まれ。19歳の時に劇団を結成、作家、演出家、役者を兼ねる。94年に解散。96年に鈴木光氏の光和インターナショナルのシナリオ部員となり、98年「お墓がない!」でデビュー。
フィルモグラフィー
映 画 「お墓がない」「39刑法三十九条」「黒い家」
テレビ 99年「夜逃げ屋本舗」(日本テレビ)(以下、向田賞対象作品)2000年「泥棒家族」(日本テレビ)2001年「トトの世界〜最後の野生児〜」(NHK)