2001 にいがた映画塾コム>実践講座

井上 経久

2001年にいがたシナリオ講座でシナリオ修行中、シネ・ウインドの月刊ウインド編集長の井上経久さんのインサイドレポートです。

その6(最終回)  思わぬ展開
7月28日 シナリオコンテストについて

 2週間スパンで提出する課題が、これほど大変とは思いませんでした。いつもヒイコラ言いながら仕上げていた課題シナリオが、数日の後にマッカッカに添削され自宅に郵送されていたここ3ヶ月。不安と少しの期待を抱えながら郵便受けを覗き込む日々ももう終わりです。

 7月28日(土)、6回に及ぶにいがた映画塾シナリオ講座も最終日を迎えました。この日は実際にシナリオを「書く」にあたっての心構えや進行方法の説明があった後は、主に質疑応答のカタチで講義が進められ、受講生から活発な質問が寄せられるなか講師の司先生が一つ一つに答えてくれました。受講生仲間の質問を聞きながら自分の3ヶ月を振り返ってみた私です。

 シナリオならではの原稿用紙の使い方を教わった初回から今に到るまで、自分のシナリオ製作技術が進歩したとは正直思えません。ただ、受講する前よりも一つの映画におけるシナリオの意味みたいな点を少しは分かってきたかなという自負はあります。また確かに面白いシナリオというものはあり、読むだけで映像が浮かび上がってくる気がしました。いつかは自分もそんなヤツを書いてみたいと思ったものです。

 受講内容と直接は無関係かもしれませんが、一緒に受講した方々と酒を飲みながら意見交換が出来た。これが今回一番の収穫かもしれません。とにかくシナリオも、他の文章表現と同様に「人間をどれだけ魅力的に書いているか」が大事だと思いました。それは受講してつくづく気付かされたことで、これまで以上に映画を楽しむ術を教わった気がします。とか考えているうちに時間も終わりに近づきました。みんなで記念撮影。その後期せずして起こった拍手。やっぱりみんな楽しかったんだろうな、俺と同じく。23000円払った、6回の講義。安かったですよ。

 スタッフの皆さん。ともかく、色々ありがとうございました。と、感謝しながらアンケートに記入しておりましたところ、「にいがた映画塾のシナリオコンクールに参加しますか」との設問に対し、つい「ハイ」と記してしまいました。これは大変だ。締め切りは8月末です。頭を抱えアイディア創出に悩んだままお盆も終了。これは引き受けなければよかったかな、と自戒交じりに脳髄に汗かく日々を、最近送っているのでした。(終わり)

その5  シナリオを書く前に
7月14日 着想のヒント、アイディア、キャラクターの追求

 例えば初めてシナリオを書き始める際、いきなり原稿用紙に向かって一気にシナリオにしていくなんてことは、少なくとも私には無理です。アイディアや段取りを練りに練った上で書き始める、つまり企画段階こそ重要である。と、今回の講義では教わりました。

 私が普段働いている映画館=シネ・ウインドは、社会人・学生・主婦・有閑男女など多様な人たちにより構成される「会員」が、作品を選び上映する事ができる映画館です。そんな時、例えばオールナイト上映などには企画書が必ず必要になります。通常上映の場合もあったほうがよい。企画書って大事です。シナリオというより映画製作の場合も同じであると、今回考えさせられました。

 シナリオのお話をしましょう。仮にシナリオコンテストに応募すると、企画意図やあらすじを添付するのが慣わしだそうです。確かに、数十枚にも及ぶシナリオを何十人分も読む審査する側のことを考えれば、肝心のシナリオを読む前に企画書・あらすじレベルで判断するのも分かりますわね。

 古今東西様々な映画もこの段階を通過しているのが大半とのことで、私が「ホホウ」と感じ入ったのが超有名作「タイタニック」の企画段階での話。監督であるジェイムス・キャメロンは製作主に対し、「沈没する豪華客船の中で繰り広げられる、ロミオとジュリエット」と自らの企画を説明したそうです。そんな映画俺も観たいよ、と思わせる説得力が大事なんでしょうな。

 さて、自分の好きな映画を一言で表したらどうなるか。「トラック野郎 度胸一番星」は、「新潟・佐渡を舞台に、トラック野郎とマドンナの刹那のロマンスを下品に描いた、もう一つのフーテンの寅」かな。「悶絶本番 ぶちこむ!!(原題:Like A Rolling Stone)」はどうだ。「ピンク映画の衣をまとった、20世紀末の日本にいたはずの男女の軽やかな人間模様」ってところかな。

 この「悶絶本番〜」は、9月29日(土)にシネ・ウインドで行なわれるオールナイト企画「サトウトシキ 映画の青い空」で上映される作品の一つです。詳しくはシネ・ウインド(025-243-5530)までお問い合わせを。

 いよいよ次回はシナリオ講座最終回です。長かったような短かったような3ヶ月、どんな終わりを迎えるのでしょうか。

その4  たかが人間、されど人間
6月30日 人物の描き方

 昨年の12月まで一人で旅行していました。中国から始まり、東南アジアやインドを通ってトルコまでたどり着いてアジア横断。その後いわゆる東ヨーロッパ諸国を中心にうろうろするという、長期旅行としては王道ルートといってよい行程でした。

 一人で旅行といえども暗黒大陸探検ではないのですから、当然かなりの数の現地の人々や日本を含む世界各地の旅行者と会って来ました。現代社会の生産性向上には全く寄与しない私の2年弱でしたが、何が収穫だったかと問われれば「様々な人間との出会い」と即答できます。この旅行中に出会った全ての人たちから受けた有象無象の施しは、私が死ぬまで掛け替えのない財産となりそうです。

 シナリオ講座第4回の主題は「人間の描きかた」。それならば俺に一言いわせてよ。面白い人間のネタ沢山持ってるんだからさあ。と、言いたいところを「ぐっ」とこらえ、その持ちネタ(?)を上手にシナリオとして立ち上げられるか、これが今回私なりに決めた課題です。

 司先生は言います。主役・脇役・端役のハーモニーを大切にしようと。魅力的な主役を作り上げ、その人物にストーリーを語らせようと。

 私、シナリオ講座を受講する度に考えさせられます。現実はとても興味深いことで満ちていますが、それはナマのままではドラマにならない。なんらかの加工が必要であり、その加工によってドラマが作られて行く。私の場合、自分が考える人物は全然ナマモノ。ドラマも何もあったもんじゃない。そもそも脇役とか端役とか考えていませんでしたから。毎回毎回講義を受けながら頭抱えております。

 とにかくこれはシナリオの講座。限られた文章量の中で人間を如何に魅力的に描けるか。この技術を教わるために受講していると言ってもいいでしょう。幸い私の記憶の中には魅力的な人物がゴマンといる。彼らを更に魅力的に再生するべく、キャラクターの見せかたとそのテクニック、スクリーンを念頭に置いた上での効果的な人物の表しかたなど、今回の講義内容を踏まえ色々考えてみることにします。何よりも私自身が、記憶の中にいる愛すべき人物を魅力的にシナリオ化したいのですから。

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その3  台詞とト書きと構成と
6月16日 せりふ、ト書きの実習
 先日図書カードを入手しました。もらって嬉しい図書カードを手に、私は月刊誌「剣道日本」とドリフターズのいかりや長介さんがお書きになった自伝「だめだこりゃ」を購入しました。全然関係なさそうに見える剣道と長さんでありますが、いずれの本も構成(剣道では自分のペースによる試合運び、いかりやさんの場合ギャグの段取り)をしっかり組みたてる事が重要とあります。特に「8時だよ! 全員集合」についての記述を読むと、いかりや長介さんが仕事にかける潔癖なまでの情熱がうかがえ、俳優チョーサンを好きで良かった、とつくづく思ったのでした。

 シナリオ講座第3回の講義の主たるテーマは台詞とト書きに関する内容。いずれも実生活ではさほど意識していない、言ってみれば映画やテレビドラマ、芝居ならではの表現といえそうです。私も今回受講していて、この2つがどうもわからない。2回ほどシナリオを教わっただけで何を言っているんだとも思いますが、正直ピンとこないのです。まあ私もド素人。習うより慣れろの心持ちで、きっちりシナリオ講座をこなしていきたいと思います。

 台詞もト書きも、共にシナリオを組み立てていく上で非常に重要なものです。取って付けたような言葉を選んだところで観客の心を惹き付けられません。それでもすぐに巧くは出来ない。わかっちゃいるけどという部分であり、焦りが生じます。先述のように数をこなさなければいけないのでしょう。ただ司先生の話を聞きながら、自分なりに一つの方向を見いだしました。漫然とした台詞・ト書きを書かないように心掛ける。その為には、その台詞を話す人物の像を作り上げる。そのト書きが不自然では無いような設定を組み立てる。要は剣道や長さんと同様、構成をしっかりさせねばいけないな。そういうことです。しかしドラマって難しいですね。日常をただ描写していれば良い訳ではない。そうつくづく思う次第です。

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その2  「承」の重要さに「ほほう」
6月2日 映像の特性と描写
 密度が濃いですよ、にいがた映画塾シナリオ講座は。司先生も言っていましたが、通常のシナリオ講座の数回分・数ヶ月分くらいのヴォリュームを、バシッ! バシッ! っと1回か2回でこなしていくのですからな。家に帰り、書きなぐったメモを清書し、もらった資料に目を通しました。やっぱり難しい。でも逆にいえばそれだけヤリガイもありそう。そんなこんなで自分を奮い立たせ、初めての宿題シナリオ「イライラする人」もヒイヒイ言いながら仕上げた次第です。もちろん間に合わせましたね。間に合わせる事が出来ました。

 第2回目の講義では、起承転結の重要性を聞きました。もちろん私は素人で、シナリオの何たるやなんてさっぱり判っちゃないです。教わった事をメモしまくって、書き落としがないかオドオドするしかありません。オドオドしているうちに話が進んでいて、「ヤヤヤヤヤ」なんて思ったり。そんな状況ながらも「ほほう」と感じ入ってしまったのは、起承転結の「承」についてのお話。ストーリーを進め、起伏の富んだものにしていくのは、この「承」が非常に大事であるとのこと。内容の濃さ・多さにやや圧倒されている私ですが、ほんの一言あるいは僅かなフレーズを繊細に捉えながら、もう少しがんばってみる事にしましょう。

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その1  居眠りする暇なんて全然ないです
5月19日 開講日、オリエンテーション/授業の方針
 他人に机を前にしてモノを教わるなんていうのは、ずいぶんしばらくぶりのような気がします。焦るなあ、大丈夫なのかしらん。こんな不安と得体の知れない期待を胸に、私はにいがた映画塾シナリオ講座の初日を迎えたのでした。教室に入ります。若い女性が目立つ。いや私より年長の人もいるな。と、キョロキョロ見まわしているうちに時刻は午後7時となり第1回目の講義は始まったのでした。

 講師の司先生がまず一発。「居眠りする暇なんて全然ないです」 いや、私も虎の子の23000円を払っているわけですから、眠ってたまるかの志で受講したのですけれども、ねえ。結構プレッシャーが掛かります。とまれ簡単に授業内容の説明を受けた後、まずはシナリオの構成・原稿用紙の使い方などについて教わりました。フムフムと聞いていましたところ突然、「では、今ここにいる自分について、シナリオを書いてください」との指示。何が何だかわからぬうち、時計がやけに早く動いている。

 焦る焦る。結局この課題は提出不要であるらしく、ともかく安心しました。今回は何発か良いパンチを食らった感じです。早いところ自分のペースを掴みたいものだ。そんな余韻を残し、夜の巷に繰り出したのでした。

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いのうえ・つねひさ 愛称ツネちゃん。1968年東京・八王子市生まれ。93年に仕事の関係で新潟来訪。98年に退職、そのまま居着く。99―2000年11月までの1年9カ月間、アジア―ヨーロッパを放浪。その様子は月刊ウインド「嗚咽本線」で連載された。2000年11月に帰国後はウインド専従として活躍中。チャーハン大好き、趣味は散歩、剣道は初段の腕前